あらすじ
「僕らの運命を変えたのは、あの島だった。」
病床の父から託されたのは、「千利休と大和家の関係を明らかにせよ」という、にわかには信じがたい宿題――。大学生・大和慎治は、父の旧友で社会科教師の毛利とともに、自宅の蔵で発見された古文書を調査し、一族の謎を解く鍵が博多湾に浮かぶ能古島にあることを突き止める。
島を訪れた慎治は、資産家・與座正之のもとで、すでに調査を進めていたモンゴル人記者・オトゴンバヤル・ネルグイと出会う。ネルグイの目的は、七百五十年前、元寇の際に博多湾に沈んだモンゴル帝国の軍船を探し出すことだった。
彼らは、正之の娘・真矢の助けを借りながら聞き取り調査を進めていく。そして、謎の核心に迫るにつれ、慎治・ネルグイ・真矢の心は、静かに、しかし確かに惹かれ合い、揺れ動いていく――。
過去と現在の想いが交錯するなか、三人がたどり着いたのは、島の近海に潜む、正史にはない「もうひとつの真実」。
これは、知られざる美島・能古島の美しい自然を舞台に繰り広げられる、一人の青年の鮮烈な初恋と、自らの“ルーツ”を巡るストーリー。